SPSS で検定可能です。
SPSSの画面 |
事の発端は、後輩の学会発表を指導していた時に、無計画な研究でコントロール群が用意されておらず、演題登録の締め切りが近づいていて、今からコントロール群を準備することも難しいというタイミングで、今あるデータでどうにかしないといけない時に「標準値と比べてみればなんとかなるかも」 ということになり調べてみました。
計測したデータを見た印象だけで 「傾向がある」とか「改善している or 低下している」 と論述するよりも統計学的有意差の有無で論述ほうが当然論理的な訳です。最近では理学療法士の研究の質が上がってきていて、統計なしではなかなか演題査読が通りません。(小規模な地方会は別ですが)
「1サンプルt検定」は 「母集団と標本集団の比較」 という前提の検定です。式は以下の通りです。
M : 母集団の平均値
μ : 標本集団の平均値
SM : 標本集団の標準偏差
n : N数(対象者数)
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検定可能なものは、一般的に認知されている不特定多数から得たデータ(母集団)、例えば 「ヒトの基準値」 とか 「日本人の平均値」、「システマチックレビューで報告されている平均値」 といったものとの比較が可能です。
以下のような場合は検定できないので注意が必要です。
例えば、A病院患者さんのある可動域の平均値(標本集団)だけが入手できたとします。
そこで、このA病院の平均値と自分の病院の患者さんの可動域(標本集団)を「1サンプルのt検定」で比較するということはできません。
この場合は標本集団同士の比較となり、一般的な「対応のないt検定」 をしなければいけません。
SPSSで解析するに越したことはありませんが、高額ソフトですから誰でも持っている訳ではありません。Excelで簡単に計算できるので、そのやり方を記載します。
まずは以下の表を作成します。
D列4行目とE列4行目は自験データの算出済みの数値を入力します。
C列4行目には自験データのN数(症例数)を入力します。
比較したい母集団のデータは平均値のみがわかっていれば大丈夫です。D列3行目に入力します。
この例では「日本人の平均30、自験データの平均33.4、症例数22名、標準偏差6.4」 ということになっています。次にt値を算出します。D列6行目のセルに「=(D3-D4)/(E4/SQRT(C4))」という式を入力します。
これでt値が算出できたので、このt値からP値を求めます。
D列7行目に「=TDIST(ABS(D6),C4-1,2)」という式を入力します。
1サンプルのt検定ができました。
Excel統計で正確に行えるのかが心配という方のためにSPSSでも行います。
上記の例と同じデータを使用しています。
データとして入力して「1サンプルのT検定」 を選択します.
以下の画面となります。検定したいデータが入った列を 「検定変数(T)」 に入れます。
次に「検定値」 の部分に日本人の平均である30と入力して「OK」をクリックします。
Excelで検定した場合と同じ結果となります。