2016/04/10

新卒の先生方へメッセージ


国家試験合格そして新入職された多くの理学療法士の先生方へ

私も早いもので理学療法士になって17年目を迎えました。
私が偉そうに言えることではないのですが、これから理学療法士として活躍されるであろう皆さんへ、今日は私なりに大切だと考えていることを簡単にではありますが、書きたいと思います。



1. 理学療法士にできることと、できないこと

理学療法士として、臨床において大切なことは、理学療法士としてできることとできないことを明確にしてから物事を考えるということです。これは臨床推論を構築していく上でとても重要です。

「理学療法士がよくできること」
(1) 関節可動域を改善すること
(2) 筋力を強化すること
(3) 筋、腱、靭帯、皮膚などの軟部組織が対象であること
(4) 動作を学習させること

「理学療法士がよくできないこと」
(1) 骨形態が病態の原因となっていること
(2) 神経の変性や壊死が原因となっていること
(3) 薬物療法が必要なこと

これらが理学療法を行う上での基本的な考え方となります。

2. どのように勉強するべきか

理学療法士の卒後教育制度が十分ではないことは、言うまでもありません。卒後に一人前になるには、各々の努力に委ねられているのが実状です。ですから、勉強の仕方がとても大切になります。

(1) カンファレンス(症例検討)をすること
自分が担当する患者さんのカンファレンスをすることが大切です。それは職場や部署で行ってもいいですし、医師や先輩と行っても構いません。重要なことは自分よりも知識や経験がある人を交えて行う必要があります。そしてそれは全症例で行うべきです。実際の患者さんについて考えるということが、臨床家として何よりも勉強になります。

私が所属している整形外科リハビリテーション学会の京都支部や滋賀支部では、定例会で症例検討を行っています。是非ご自身の症例について症例検討を行いましょう。

(2) 論文を読むこと
多くの知識を得るために、一般的な医学書(教科書)や総説論文を読むことは大切ですが、最新の医学的知見や理学療法を行う上で必要な事象については原著論文や臨床研究報告を読むことが必要です。

(3) 学会へ参加すること
理学療法士の学会へ参加することは言うまでもなく重要ですが、是非医師の学会へ参加してください。医学の基本や考え方をより多く学ぶことができます。西洋医学の歴史は医師によって構築されてきています。医師のあり方は理学療法士のあり方と言っても過言ではありません。

(4) 解剖学、生理学、運動学が大切ということ
世間には「たったこれだけで良くなる」とか「何分の〇〇で良くなる」と謳った本やセミナーなどがあるようですが、そんなことで患者さんが本当に良くなるのなら、医師も理学療法士もそして患者さんも苦労はしません。もしそれが本当なら、学術論文になっているはずです。基本はやはり解剖学と生理学と運動学です。これらの知識、病態の理解、組織の修復過程を本当に理解していれば、自ずと理学療法の進め方が決まってきます。

(5) セミナーは実技がある(ハンズオン)ものに参加するべき
座学主体のセミナーを愚弄しているわけではありません。ただし、セミナーに参加するということは、あくまでも前述した教科書や総説論文を読むこととさして差がないということです。理学療法の技術が卓越している先輩が職場に居るのであれば、実際の症例を通して評価法(医師でいうところの診断法)や理学療法の技術や工夫(医師でいうところの治療技術や手術での工夫)を教えてもらうべきです。もしそういう先輩が職場に居ればセミナーへの参加はほとんど不要でしょう。そしてハンズオンセミナーに参加したからといって、それだけで技術が獲得できるということはありません。そこを理解して各種セミナーへ参加されるべきです。学生時代に部活をしていて、いきなり技術が上手になるということはありませんでしたよね。特別なセンスを持った人でない限り、より多くの練習をしたものだけが卓越した技術を身につけていたはずです。理学療法士も同じということです。

(6) 他施設へ見学に行くこと
医師は、海外や国内へ留学して高い技術を学ぶというフェローシップが確立されています。残念ながら、理学療法士にはありません。経済的な後ろ盾はありませんが、休みを利用してプロフェッショナルといわれる理学療法士がいる施設へ見学に行くべきです。意識が高い理学療法士は間違いなく見学を許可してくれます。ハンズオンセミナーで技術を学ぶ何十倍も勉強になるはずです。

京都下鴨病院では事前に連絡を頂ければ、いつでも見学は可能です。
ono.shiso*shimogamo-reha.jp(*を@に変えてください。)もしくはcontact formからご連絡ください。

(7) 知識は与えられるものではなく、自ら学ぶもの
積極的に学会発表や論文投稿をするべきです。知識を増やすには最も近道といえます。

3. 臨床家と研究者は違うということ
医師の世界では、教育・臨床・研究が一体となっています。残念なことに理学療法士の世界はそうではありません。一部にはありますが、多くの場合、臨床と教育・研究が分かれています。医師でも同じですが、iPS研究をしている医師が整形外科の手術が卓越しているというわけではありません。研究が優れていることと、臨床が優れているということは別もののことが多いということです。何をどう学ぶのか、誰から何を学ぶのか、臨床のことを学びたいのか、研究のことを学びたいのか、これらを分けて考えなければなりません。

4. 何より患者さんへの愛が大切
患者さんがもし自分や自分の愛する家族、友人、恋人だったらどうするか…ということを常に考えて行動してください。そうすれば、どういう行動をするべきかが見えてきます。医療人としての基本です。

私自身もまだまだこれから努力が必要です。新卒の皆さんも是非、Super Physical Therapistを目指して努力を続けてください。

Keep Calm & Love Physical Therapy
All for a smile of patient... by OH!NO!DX

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